「酒屋の嫁」は思ったほど悪くない。
最近やっと思う。
「酒屋の嫁」は思ったほど悪くない、と。
思えば嫁歴11年。ものすごい年月があっという間に流れている。
子供の頃で例えるなら、小学校1年生から高校2年生までだ。すごい。
大人になると11年なんて流れ星のように一瞬である。
あまり大きい声では言えないが、中学校の同級生である店主と結婚したら、そこは「酒屋」だったのだ。
「酒屋の嫁」になる前の私の感覚から言わせて頂くと、
一年に一度は異国へ行きたかったし、月に数回は友人とテニスをしたかったし、
週に一回は美味しいものを食べに飲みに行きたかったし、…そんな感じである。
もちろんどれ一つ実現しない!恐るべし「酒屋の嫁」である。
当初、この世の終わりに来てしまった感覚さえあったのは事実である。
山盛りの伝票入力と、長男とんきち出産と、嫁事情と。
私の人生はこれでいいのか、これが私の人生か、と自問自答が続いたりした訳で、
今も覚えているあのもどかしさが、あの逆境が、私の原動力となったのだ。
とにかく無力な自分である。
頼りなのは、「意味があるのかないのかよく分からない妄想」それだけ。
本当にそれだけ。
あれから11年。
店主を筆頭に子供たちや家族、友人。色んな人が温かく支えてくれた。
そして最近やっと思えるのだ、
「酒屋の嫁」は思ったほど悪くない、と。
これからどこかの「嫁」になる方がいるのなら、ちょっとだけ後押ししたい。
何事も思うほど悪くない。
これが今の「酒屋の嫁事情」。